次亜塩素酸水と次亜塩素酸ナトリウムの誤使用に注意!運用のコツとは?
朝夕の気温差が大きくなり、日に日に寒さが増してきました。
新型コロナウィルスの感染は収まりつつありましたが、また増加傾向にあるようです。これからの季節は寒さと乾燥で風邪をひきやすくなるため、早めの準備を心掛けたいところです。
さて、新型コロナウィルスの感染拡大をきっかけに、空間噴霧やスプレーボトルに入れて除菌・消臭をするアイテムとして次亜塩素酸水が認知されるようになりました。
しかし一方で、名称や形状が似ていることもあるせいか、消毒・漂白用の次亜塩素酸ナトリウムと間違い易く、うっかり使用してしまって危険な状態となる例もあるようです。
厚生労働省の「職場のあんぜんサイト」では、間違えて次亜塩素酸ナトリウムを空間噴霧することでめまいや吐き気等の症状が出てしまった例を基に、注意喚起をしています。
そこで今回は、次亜塩素酸水と次亜塩素酸ナトリウムを絶対に間違えないようにするための工夫や、正しい取扱いのポイントについて改めて整理してみたいと思います。
(尚、ここで言う次亜塩素酸ナトリウムは液体の次亜塩素酸ナトリウム水溶液のことです。ご了承ください。)
1.次亜塩素酸水と次亜塩素酸ナトリウムの共通点・注意点
1-1.見た目や扱い方など、確かに共通点は多い
まず初めに、次亜塩素酸水と、次亜塩素酸ナトリウムの共通点をみていきましょう。
・透明な液体(次亜塩素酸水は無色透明です。次亜塩素酸ナトリウム自体は黄色ですが、含有濃度など商品によっては無色透明の場合があります。)
・塩素臭(次亜塩素酸水は微かな臭いですが、次亜塩素酸ナトリウムはかなり強い臭いがします)
・希釈が可能
・遮光密閉が必要
さすがに、どちらも主成分が「次亜塩素酸」であり、名称も近いだけあって、たしかに似ている点は多いといえます。
「ということはやはり危険じゃないか?」と思われる方もいるかもしれません。
しかし、次の点で両者は大きく異なります。
1-2.重要な違いは「安全性」
次亜塩素酸水と次亜塩素酸ナトリウムが大きく異なる点、それは特に「安全性」の点です。
その主な理由は「液性」の違いで、
・次亜塩素酸水は、概ねpH5~6.5程度の「弱酸性」
・次亜塩素酸ナトリウムは、pH12以上の「強アルカリ性」
というところがポイントです。
「弱酸性」といえば人の肌と近いため、触れても安全ということはご存知の方も多いと思います。
しかし、「強アルカリ性」は人体にとって危険で、肌に触れると火傷のようになり、吸引するとめまいや吐き気を催すなどの症状が出てしまいます。
厚生労働省も注意喚起していますように、次亜塩素酸ナトリウムは絶対に空間噴霧してはいけません。
※次亜塩素酸水と次亜塩素酸ナトリウムの違いについては、こちらのコラムもぜひご覧ください。
「次亜塩素酸ナトリウムと次亜塩素酸水は、結局何がどう別物なの?」(ウィッキルコラム)
※また、こちらのコラムでは次亜塩素酸水が次亜塩素酸ナトリウムと混同されやすい背景や、空間噴霧に対する厚生労働省の姿勢などについてまとめています。
「次亜塩素酸水溶液は、危険なの?」(ウィッキルコラム)
2.間違えないようにする運用上のポイント6つ
このように、似ている点もありつつやはり決定的に異なる両者ですが、注意しなければいけないのは次亜塩素酸ナトリウムの取扱いにある、といえます。
次亜塩素酸水は、ほとんどの場合人体にとって深刻な害を引き起こしにくい存在といえるからです。
そのため、「同じ施設内で次亜塩素酸ナトリウムの取扱い“も”ある」場合に、うっかり誤使用してしまわないよう注意する必要があります。
そして誤使用を引き起こす最大の要因は、スタッフの数が多かったり、どちらも使用頻度が高かったりなど、やはり「運用の過程」にあると考えられます。
そこで、運用時の誤使用を防ぐポイントについて参考となるポイントを考えてみたいと思います。
2-1.基本的に、移し替えをしない
共通点でも取り上げましたが、商品によっては無色透明な場合がありますし、一度商品のパッケージから出すと似たような液体にみえてしまいます。
勿論、ニオイをかげばすぐに分かる程、次亜塩素酸ナトリウムは強い塩素臭がするため分からなくもないのですが、見た目でパッと区別できない可能性もある以上、基本的に抽出後の保管や容器の移し替え自体をしないことが第一です。
2-2.移し替えする場合は、容器に商品名を書いておく
それでもどうしても、保管場所を分けたり、持ち運んだり等で移し替えをする事がある場合もあるかもしれません。
その場合の間違えないポイントとしては、「商品名を容器に分かり易く書いておく」こともおすすめです。
「次亜塩素酸~」という液体名を書いてしまうと、最後まで読まないと分かりませんし、読み間違いも起こり易いため、「ウィッキル」など、具体的な商品名を書いておく方が分かり易くなります。
また、その際の文字の色も、「次亜塩素酸水は青」「次亜塩素酸ナトリウムは赤」、といったように、信号機と同じ色で安全性を視覚的に示すこともパッと見で誰もが分かり易くなります。
商品名だけでなく、「加湿器(噴霧器)用」など、用途を明示しておいても良いかもしれません。
2-3.箱の置き場所を分ける
移し替えなどせず、商品パッケージからそのまま使用する場合は間違えが起きる可能性は減りそうです。
ただ、それでもスタッフの人数が多かったり、次亜塩素酸水と次亜塩素酸ナトリウムのどちらも使用頻度が高かったり、忙しかったりすると、通常では考えられない「うっかり」が生じる可能性があります。
そのため、「誰も間違えることはないだろう」ではなく、少しでも誤使用発生の可能性を減らすための工夫をしておくと良いでしょう。
例えば、日常の除菌に回数多く使用する次亜塩素酸水は手前の方や、使い易い場所に置く。一方で、次亜塩素酸ナトリウムは、消毒や漂白など、危険性を踏まえた上で明確な目的を持って使用するため、あえて奥まった所や少し取り出しにくい棚に置くなど、あえて僅かな不便を犠牲にして区別しておくと良いかもしれません。
2-4.箱の容量を分ける、ラベルを見る
置き場所を分ける以外にも、容器のサイズを分け、「見た目」で違いが分かるようにすることも一つのポイントかもしれません。
例えば、次亜塩素酸水溶液ウィッキルでは、濃度にもよりますが「5L」「10L」「18L」の3種類の容量を展開しています。
次亜塩素酸水と次亜塩素酸ナトリウムで、使用する容量を分けるという一工夫によって、「いつも使用している容器と違う」という気付きが生まれ、うっかりミスを防げる可能性も生じるのではないでしょうか。
また、箱に貼られた商品ラベルを必ず確認することで、自分が使っているものが何なのかについて意識することもできますので、当たり前と言われればそれまでですが、ラベルを確認する、という行動も案外一つの欠かせない手順だったりします。
2-5.作業手順や動線を固定しルーティーン化する
誤使用が生じやすくなる要因は、異なる人、使い方、タイミングなど、様々な状況下で生まれやすくなります。
そのため、極力誰がいつやっても間違いが起こらないようにという観点でスタッフの作業手順や動線などを規程しておき、人による作業の微かなブレも生じさせないようにする工夫があると良いでしょう。
勿論、どこまでいっても完璧な方法はありませんが、「間違いは、いつでも誰でもどこでも、必ず起きる可能性がある」という前提に立って、いかに未然に防げるかについて考えることが大切です。
まとめ:少しでも誤使用が発生する可能性を減らす工夫を
いかがでしたでしょうか。
次亜塩素酸水は、安全性が高く、空間噴霧も可能など、空間内の環境をキレイにするために有効に活用したい便利な除菌・消臭アイテムです。
しかし、次亜塩素酸ナトリウムのように「消毒」効果を謳えるわけではありませんし、施設の管理上どちらも使用するという場合も多いかもしれません。
どちらも環境をより良くする為のものなのに、誤使用によってスタッフや利用者の方を危険に曝してしまうことは、絶対に避けたいところです。
今回列挙した方法は、もちろんどれも100%事故を防げるといえるものではありません。
色々方法を考える以前に「使用する商品の容器に書かれていることをしっかり読む」こともまず基本中の基本ですし、運用過程以外にも間違いが起こる状況は様々あるため、大小様々なレベルにおいて基本を徹底することがまず重要です。
少しでも問題が発生する可能性を減らし、安全安心に運用できるよう、各施設に合ったベストな方法を模索する参考になれば幸いです。